馬券を買うべきか買わないべきかを決める意思決定の数式をつくってみよう

目標は1000円賭けた時に50%の確率で2000円戻ってくる馬券を買った時に0が出力される簡単な数式を作ること。*1

この状態では50%の確率で勝てば2倍、負ければ0倍なのでリスクとリターンが釣り合っている。よりリターンが大きい場合には正の値、よりリスクが大きい場合には負の値が出力されるようにしたい。

算出

ここでの「50%の確率」に値する数値を馬券を購入する時に自分の中で推定した「自信度」と定義して計算を進める。

・掛け金(円)  := z

・最終オッズ(倍率)  := x

・払戻金(円) = 掛け金 * 最終オッズ  = zx

・自信度(%)  := y

・払戻金の期待値 = 払戻金 * 自信度 {\displaystyle =\frac{xyz}{100}}

・利益の期待値 = 払戻金の期待値 - 掛け金 = {\displaystyle \frac{xyz}{100} - z = z (\frac{xy}{100} - 1)}

・意思決定の数式 = 利益の期待値 / 掛け金 =  {\displaystyle \frac{z(\frac{xy}{100} - 1)}{z} = \frac{xy}{100} -1 := f(x,y)} 

これでオッズと自信度を変数とする最もシンプルな形の意思決定の数式ができた。*2

計算例

例えば20%の確率で取れる(と思う)馬券のオッズが3.0倍だった場合、

 {\displaystyle f(x,y) = f(3.0, 20) = \frac{3.0 * 20}{100} -1 = -0.4 } 

となり、値が負なので買ってはダメ。

一方、10%の確率で取れる(と思う)馬券のオッズが20倍だった場合、

 {\displaystyle f(x,y) = f(20.0, 10) = \frac{20.0 * 10}{100} -1 = 1 }

となり、値が正なので買ったほうが良い。当然、値が大きければ大きいほどリターンが見込める。

考察

この数式が示唆するのは競馬で儲けるためには下記2点が必要であるということ。

1.「自信度」の正確な推定

2. 過小人気のオッズの馬券を狙う 

1に関して、「自信度」は過去の自分の的中率(予想の上手さ)、そのレースにあたって調べ上げた情報量、そして最終買い目のカバー範囲によって左右される。つまり、競馬予想というのはこの「自信度」を正確に推定するために費やされるべき活動である。

ここで注意したいのは「自信度」を上げることは必ずしも必須ではないということ。例えば複勝ではなく3連単を買うというだけで「自信度」は絶対に下がる。そもそも組み合わせの数が違いすぎるので当然のこと。

そこで重要になるのが2。2が示すのは競馬は「勝つ馬を探す」ゲームではなく、「オッズの歪みを探す」ゲームだということ。大抵の参加者は「勝つ馬を探す」ゲームをやってしまっている(自分も含めて)。そもそものゲームのルールを勘違いしていると言っても良い。

本当に儲けたいと考えるなら、過剰人気の馬券を嫌い、過小人気の馬券に投資し続ける必要がある。これをしないと長期的に見て絶対に負ける。何故ならリスクとリターンが釣り合っていないから。

こうして見ると様々な競馬の教訓は割と正しいことを言っていることがわかる。馬券師のおっさんのつぶやきも、ロジカルに考えれば筋が通っている。

「分からないレースは買うな」は見積もった「自信度」が正しくないから。

「人の予想に乗るな」は馬券を買う人に依存する「自信度」の推定を他人に任せているから。

「ダントツ人気馬の複勝勝負がカモ」と言われるのは大抵の場合それが過剰人気馬券でリスクとリターンが見合わないから。

まとめ

今回は簡単な意思決定の数式を作ることで、競馬で儲けるためにはどのような行動が必要なのかを考察した。

ひとつは十分な情報量を持って「自信度」を正確に推定するということ。もうひとつは競馬は「勝つ馬を探す」ゲームではなく、「オッズの歪みを探す」ゲームだということを忘れないこと。

この2点に気をつけるだけでも長期的にプラスになる可能性が高まってくるはず。レッツエンジョイユア競馬。

*1:今回は簡単化の為一つの馬券を買った場合の数式をつくる。当然、複数の馬券を買う場合には掛け金を按配して計算していく必要がある。

*2:実用的にはオッズと自信度(x,y)を掛けて100以上かどうか、を目安にするといい。ここでは説明の都合上この数式のまま計算を進める。